最近ネットの動画を見て興味がわいたので佐藤優の『国家の罠』を読んでみた。鈴木宗男さんの関連で国策捜査でやられたあの佐藤さんです。
この本を読むまでこの人のやっていた仕事について全く知らなかったのですが日ロ平和条約締結にむけてのインテリジェンス、政治の世界で言う諜報活動ですね。神学部をでて外務省の官僚になったというだけでも異色の人物ですが、この本を読んでいろいろ勉強になりました。
全く予期していなかったことですが、この本に映像記憶の情報があったのは貴重でした。佐藤優さんは映画やビデオを見るように記憶を再生する映像記憶の持ち主なんですね。
以前NHKの相撲番組をしていた元アナウンサーのかたの映像記憶の証明をTVの番組で見たことがあります。ある相撲の取組みを頭の中で再現して同時に実況するものでした。それを当時のビデオと一緒に見ると単に実況が正しいだけでなく、実際の取組みと時間的にも完全に一致しているので唸りました。
すべてが映像で記憶されるとなると、その膨大な記憶の情報量に頭がパンクしてしまうんではないかと不思議に思っていましたが、佐藤さんの本を読んで少し疑問が解消されました。映像記憶に関する記述はごくわずかなので、メモ代わりにここに載せておきます。
『情報屋の基礎体力とは、まずは記憶力だ。私の場合、記憶力は映像方式で、なにかきっかけになる映像が出てくると、そこの登場人物が話し出す。書籍にしてもページがそのまま浮き出してくる。しかし、きっかけがないと記憶が出てこない。
私にはペンも紙もない。頼れるのは裸の記憶力だけだ。独房に戻ってから、毎日、取り調べの状況を再現する努力をした。私の体調がよくないので、取調室には化学樹脂の使い捨てコップに水が入れられていた。私はときどきコップを口にする。その水の量と検察官のやりとり、また、西村検事は腕時計をはめず(腕時計をしているならば、時間とあわせて記憶を定着させることはそれほど難しくない)、ときどき懐中時計を見る癖があるので、その情景にあわせて記憶を定着させた。いまでも取り調べの状況を比較的詳細に再現することが出来る。』 P.217-218
『前に申し上げたように、私の記憶術は映像方式である。手帳のちょっとしたシミ、インクの色を変えること、文字の位置を変化させることで、記憶を再現する手がかりが得られる。独房にノートがあるので、そのノートに別の手掛かりになる記述をすれば、過去の記憶をもう一度正確に整理することができる。……手帳を見て、特に鈴木宗男氏に関する記憶を再整理しておくことが重要だった。この時、記憶を整理する作業をしたからこそ、現在も手帳は東京地方検察庁に押収されたままであるが、私はこの回想録を書くことができるのである。』 P.274
自動的に記憶されるのではなく、記憶する手続きが必要なんですね。「手帳のちょっとしたシミ、インクの色を変えること、文字の位置を変化させること」というのはちょっと理解しづらいですが、記憶する対象の部分をを少し意識の中で変えることによって、記憶を再生する手掛かり・インデックスにするということでしょうか?
彼の弁護団に外交や特殊情報[諜報活動]を理解するために薦めた本として『われらの北方領土』(外務省国内広報課)、和田春樹『北方領土問題』(朝日新聞社)、ウォルフガング・ロッツ『スパイのためのハンドブック』(ハヤカワ文庫)、鈴木宗男氏を理解するために検察官に薦めた本として、内藤国夫『悶死ー中川一郎怪死事件』(草思社)があげられています。
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