次に『数学ガール フェルマーの最終定理』結城浩著での扱いを見てみましょう。
「23(2の3乗)という数式を見たとき、僕たちは<指数>--つまり2の右肩に乗っている3のこと--は2を<掛ける個数>を表していると習う。」
23=2×2×2
「え、それ、まちがいなの?」ユーリが言った。
「いや、まちがいじゃない。完全に正しい。もしも指数が1,2,3,4,...ならば、指数は<掛ける個数>を表しているといってもいい。もっとも、指数が1のときは実質的に掛け算していないけれど、まあ分かるよね」 p.269
至極まともなことを言っているように見えますが、デカルトに戻って考えてみると、「もっとも、指数が1のときは実質的に掛け算していないけれど、まあ分かるよね」、ここに疑問符が付くことになります。それは後のお楽しみにしてゼロ乗の説明を見てみましょう。
「では指数が0のときはどうだろう。20の値は?」と僕は言った。
「それは0でしょ」とユーリが言った。
「え、1ですよね」とテトラちゃんが言った。
「テトラちゃんが正解。20は1に等しいんだ」
20=1
「え、なんで?掛ける個数が0個だよ。なのに0じゃないわけ?」
「……テトラちゃんはなぜ20=1になるか説明できる?」
「え、あたし、ですか。……うまく説明できません。すみません」
「こんなふうに考えると納得がいく。24,23,22,21,20のように指数を1づつ減らしていくとしよう。そうすると、計算結果はどのように変化するかな」 p.270
さて計算してみると答えは、16,8,4,2と指数が一つ減るごとに2分の1になっています。すると20は21=2の2分の1、すなわち1となります。
「2の半分だから……あ、1になるのか。へえ。20=1なんだ」
「そうだね。だから、20=1と定めることにする。」
「えー、でもー、なんだか納得いかにゃい」 p.270
とうとうネコ言葉になってしまいました。それでこんなことを言われることになります。
「ほらほら、発想が<掛ける個数>にまた戻っているよ。あのね、指数を<掛ける個数>だと考えている限り、納得することはないんだよ。納得したとしても、なんだか無理矢理こじつけたような気分になる。」 p.271
このあと<掛ける個数>、<2を何回掛けたか>という発想から離れて、指数法則自体から、指数法則を守るように指数を定義するという方向に導かれます。
「たとえば20の値を調べよう。指数は指数法則を満たす。
2s×2t=2s+t
だから、指数法則にs=1,t=0 を代入した等式も成り立たなくちゃ困る」
21×20=21+0
「へえ……それで?」
「右辺の指数1+0=1 を計算すると、次の等式が成り立つ。
21×20=21
指数法則から21の値はわかる。21=2 だ。よって次の等式を得る。
2×20=2
両辺を2で割れば、20の値が1 に定まるね」 p.273
しかしこれこそ「なんだか無理矢理こじつけたような気分になる」 のではないでしょうか? 著者は早く何個掛ける発想から卒業しないといけないぞというのですが、文系の私はついネコ言葉を使いたくなってしまいます。
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