2011年11月29日火曜日

パーニニ文典購入

Astadhyayi of Panini by Sumitra M. Katre が届いた。
インドの本屋さんからAbeBooks 経由で送料込み3000円切った。
1334ページ、重量2kgくらい。
エアメールなのに1カ月くらいかかるのはインドの神秘だろうか?

2011年11月21日月曜日

パーニニの天才性

平岡昇修著『初心者のためのサンスクリット文法I』を手に入れて、正誤表を見ながら本に書き込んでいたら意味不明のところがありました。どういう意味か調べているうちにそれがパーニニの用語であることがわかり、彼の驚くべき天才性を目の当たりにしました。といっても私が理解したのは記述のスタイルだけなのですが、それだけでパーニニの巨大さの片鱗をうかがうことができました。

その正誤表の分からなかったところというのは、名詞の造語法・接尾辞に関するものでした。
動作主名詞をつくる接尾辞に -aka がありますが、正誤表に णक 【(ṇ)aka】 と記されているところを、ण्वुल् 【ṇvul】 に修正するように指示されています。 -aka は動詞語根に直接付く第一次接尾辞で-aka の前についている (ṇ) は指示文字と呼ばれ、この場合動詞語根の母音変化の振る舞いを指示する記号です。それでは何故 णक 【(ṇ)aka】 を ण्वुल् 【ṇvul】 に修正しなければならないのか分かりませんでした。 णक 【(ṇ)aka】 の方はちゃんと接尾辞の-aka が見えますが、ण्वुल् 【ṇvul】の方にはさっぱり接尾辞らしいものが見当たりません。

ṇvul を辞書で引いてみると、なんと辞書に載っていません。仕方ないのでネットで検索すると、どうやらパーニニに関連するらしいことがわかりかけてきました。Aṣṭādhyāyī(パーニニ文典)に書いてあるらしいですw もともと指示文字(ṇ)とか考えたのがパーニニで、ṇvul もパーニニの用語なのでした。そうすると最初の ṇ が怪しいですね。これも指示文字なのでしょう。調べているうちに最後の l も指示文字らしいようです。分かりやすく指示文字は大文字で表記する流儀があるようなので、それに従うとṄvuLと表記できます。(指示文字Lの意味は分かりませんでした。)それで vu=aka になるらしいのですが、どこに説明したあるのか分からずお手上げです。 ṇvul を辞書で引いても出てこないのは、もともとそれは単語ではなくて、パーニニの考案した記号だからでした。

第一、ṇ で始まる単語自体、モニエルに4単語しかなく、そのうち2単語は単なる音としての子音に関するものです。このあたりに普段めったに語頭に現れない音を記号に採用して、記号と単語の混同が起きないようにしたパーニニの工夫がすでに表れていたのでした。

それでとりあえず ण्वुल् 【ṇvul】の追及はあきらめて、Aṣṭādhyāyī の始まりのところを見てみることにしました。(思えばこの時何も理解していませんでした。)Google books で次の2冊を参考にしました。

Pāṇini's Grammatik, Otto von Böhtlingk
Aṣṭādhyāyī of Pāṇini,
Sumitra Mangesh Katre


初めにシヴァ・スートラという音の分類表のようなものがあります。パーニニ自身その分類表の見かたとか何も書いていません。(後で訳者の解説を読んでどうにか理解しました。)音を分類してあること以外意味不明なのでスルーしました。それで最初のスートラがこれです。
वृद्धिरादैच्  vṛddhirādaic
独訳を見るとこれで「ā、ai、au をヴリッディという」となっています。
vṛddhirādaic は vṛddhir ādaic に分けられますから、前半にヴリッディは判別することができます。語末の r は-i ā- ⇒ -irā- の外連声です。
 それではどうして ādaic が ā、ai、au になるのでしょうか? 例によって辞書を調べても出てきません。第一サンスクリットでは語末に現れる子音は限られていて(絶対語末)、c は語末に存在することができないのです。Sumitra Mangesh Katre の英訳を見ると、āT=aiC と分解されています。ādaic の d は外連声で t  が有声化したものだと分かります。T も C も指示文字(IT marker)です。āT の T の意味合いはまだよく理解できないので、とりあえず āT で意味されているのは ā としておきます。
(Wikipediaによると「Tの文字もあらわれるがこれもITマーカーと呼ばれ、1.1.70で定義されている。このTはそれに先立つ音素が音素リストにあらわれず、アクセントと鼻音化をしめすメタ文節的特徴を含む単一の音素である。例えばāTとaTはそれぞれ{ā}、{a}をあらわしている。」)
次に aiC ですが、どうしてこれでヴリッディの
ai、au を示すことができるのかというと、これは先にスルーしたシヴァ・スートラの音の一覧表を用いた表記方法になっているのです。シヴァ・スートラの4行目を見ると ai au C となっています。aiC で ai で始まり C で終わるまでの音を示しています。最後の C は IT marker なので、実質示されているのは、ai au の二つになります。

次のスートラを見ると…
अदेङ् गुणः adeṅ gu
aḥ
グナは一目でわかるので、残りの adeṅ ですが Sumitra Mangesh Katre に従って分解し、連声前の形に戻して IT marker を大文字にして分かりやすくすると、aT eṄ になります。aT は短母音の a を示し、 eṄ は先ほどのシヴァ・スートラの3行目を見ると e o Ṅ になっているので e で始まり Ṅ で終わる e o を示しています。したがって「グナは a、e、o である」となります。


ここまで来て最初からこの調子で、最後まで変わらず方程式のような記述が続いているのではと気がつきました。心の叫びとしては「最初からこれかよ!」です。古典語は格変化があるのでbe動詞がなくても文が成立するのですが、パーニニのスートラはbe動詞だけでなくほとんど動詞自体がないスタイルでコンパクトに記述しているようです。しかしこれが紀元前4世紀の人間の考えることでしょうか?!

 

2011年11月17日木曜日

サイ・マー 動画まとめ


光と豊穣の聖者 サイマー
録画日時 : 2011/02/22 13:02 JST
http://www.ustream.tv/recorded/12859819
礼子デューイさんのインタビュー

Sai Maa Lakshmi Devi 光の聖者サイマー
録画日時 : 2011/04/24 22:05 JST
http://www.ustream.tv/recorded/14247244
サイ・マーがライブ出演したときの録画

サイマー ディクシャ トレーニング
録画日時 : 2011/04/02 13:19 JST
http://www.ustream.tv/recorded/13716643
見るだけでディクシャを受け、伝授もされるビデオ

礼子デューイさんインタビュー【改訂版】
録画日時 : 2011/10/13 15:59 JST
http://www.ustream.tv/recorded/17845445
パワーアップしたサイマー・ディクシャ伝授あり
上の編集前のビデオ
録画日時 : 2011/10/11 20:27 JST
http://www.ustream.tv/recorded/17812944 

この時点では自分自身にディクシャはできないので、他の人にディクシャを与えたら、その時自分自身を通してディクシャのエネルギーが流れるから、ディクシャが欲しいときにはほかの人にディクシャを与えましょうという話でした。

その後公式のホームページを見ると10月18日の記事で自分自身にディクシャできるようになったと告知されています。
その手順は1.光に感謝をささげる。 2.両手を合わせる。(合掌でなくて両手で水を掬うような感じでしょうか) 3.手のひらの中心を前頭葉(髪の生え際のところ)に置く。

http://www.humanityinunity.org/utility/showArticle/?objectID=10074
Give Sai Maa Diksha to Yourself!

Sai Maa has just announced that those trained in Sai Maa Diksha can now offer Diksha to themselves.

Traditionally, Sai Maa Diksha is a hands-on technique that is offered from one person to another. Now, those who are trained may place their hands on their own heads to offer themselves the blessing. When offering to ourselves, we follow all the same steps:

1. Offer our gratitude to the Light;
2. Bring the hands together;
3. Rest the center of the palms above the frontal lobe (at the hairline).

Sai Maa Diksha is a powerful technique to initiate and support the process of Enlightenment by pouring Light into the seeds of fear in the brain. The word Diksha means "initiation" and has existed for eons. Every Diksha is unique to the Master who offers it. Sai Maa Diksha carries the energy of Sai Maa's lineage and is a transmission of Light that we can all be trained to offer.

2011年11月15日火曜日

サンスクリット用のIME、フォント

サンスクリットの入力で自由にデーヴァナーガリー入力するための、サンスクリットIMEを紹介してみましょう。

最初に試したのはChandas IME
しかしこれは64bitのOSに対応せず自分の環境では動かせませんでした。

次に試したのがVidyut。キー配列は、ほぼChandasと同じですが、Chandasで出来たZWNJやヴェーダ語のアクセント記号の入力ができません。

ヴェーダ語まで手を出す余裕はないのでアクセント記号の入力ができないのは構わないけれど、ZWNJの入力ができないのはちょっと困ります。

ドキュメントを読んでいると、必要ならMicrosoftのKeyboard Layout Creator 1.4でカスタマイズするように書いてあったので、ChandasIME風に改造しようかと思ったのですが、それよりもChandasIME自体をKeyboard Layout Creator で読み込んでSetup Packageを作成すれば手間が省けると気づきました。そこでVirtualPCのXPモードでChandasIMEをインストし、それをKeyboard Layout Creator で読み込んで64bit OS 用のセットアップ・プログラムを作成しました。

他にVaidikaというIMEもあります。

IAST、HK関連でこんなのもあります。
GGM XHK Keyboard
キーはHarvard-KyotoでIASTInternational Alphabet of Sanskrit Transliteration)入力できるIME。

Veni XHK Sans Condensed
Veni XHK Serif Condensed
Harvard-KyotoのテキストをIAST表示にするFont。

2011年11月12日土曜日

Ashtavakra Gita のE-Text

ネット上にAshtavakra Gita のE-Text がいくつかありますが、比較してみると結構間違いがあるので、自分でE-Text を作ることにしました。

最初に下敷きにしたのはこれ。調べてみると結構間違いがたくさんあります。
Sanskrit text with English Transliteration & Translation by John Richards
http://www.scribd.com/doc/54192897/

次に上のに比べてかなりよく修正されているのがアーナンダ・ウッドのテキストで複合語も単語間をハイフォンで繋いで示しているので助かります。
Ashtavakra-samhita by Ananda Wood
http://sites.google.com/site/advaitaenquiry/Ashtavakra.pdf

これとほぼ同じテキストがここにあります。
http://gretil.sub.uni-goettingen.de/gret_utf.htm#Astavg

それで最終的に Nityaswarupananda のデーヴァナーガリーのテキストと比較して残された間違いを消していっているところです。1940年版と1953年版があります。下のリンクは1940年版です。
 http://www.scribd.com/doc/2673274/AshTavakra-Geeta


ITRANS で転写して、ITRANSLATOR で変換してデーヴァナーガリーと IAST のテキストを作成するのですが、同じ単語でも表記の仕方がいくつかあるので、Nityaswarupananda のテキストに合わせて最後は手で編集することにしました。

デーヴァナーガリー文字の場合フォントによって、表現できる結合文字の数に違いがあるので、できるだけ多くの結合文字を使えるようにまずフォントを選ばないといけません。それでITRANSLATORのホームページからSanskrit2003.ttf と svayambhava.org から Chandas.ttf 等をダウンロードしてインストしました。


参考までにフォントによって結合文字の表現がどのように変わるかいくつか例を挙げてみました。
まずṅgaを見てみるとMangal では縦の結合文字が表示できません。

ddhaではどのフォントも結合文字が表示されますが、一字追加してddhraになるとMangalで結合文字が表示できずに、最初のdがヴィラーマでの子音表記になります。さらに一文字追加してddhryaになるとSanskrit2003でも結合文字が表示できずに最初のdがヴィラーマを用いた表記になります。ChandasとSiddhantaでは結合文字表記できますが、字の形が違いますね。

次のjjaの三つの表記方法は入力の仕方によって表現できるものです。
ज(ja)+ヴィラーマ+ज でjjaの結合文字が表記できます。(Mangalにはjjaの結合文字がないので表記できません。)Sanskrit2003では水平方向の結合になっているのに対し、残りの二つでは垂直方向の結合文字になります。
ज+ヴィラーマ+ZWJ+ज でjの半体を用いた表記になります。ZWJはゼロ幅接合子(Zero-width joiner U+200D)
ज+ヴィラーマ+ZWNJ+ज で半体にならずヴィラーマ自体が表示される表記になります。ZWNJはゼロ幅非接合子(Zero-width non-joiner, U+200C)

Nityaswarupananda のテキストから実例を挙げてみます。アシュターヴァクラ・ギーターの2章7節ですが、上段にjjaの水平方向の結合文字、下段にjjの半体表記とヴィラーマによる表記があります。

ウパデーシャサーハスリー校訂本が届く

前田専學さんのウパデーシャサーハスリーの校訂本が届きました。

早速気になっていた韻文編の17章第24詩節を調べると、やはり意図的に削除されていました。

韻文編のテキストを見ると大きくA系とB系に分かれていて、次のような特徴があるそうです。

A系…韻文編が最初に来て、散文編がそれに続く。韻文編4章5’を欠いている。
B系…散文編が最初に来て、韻文編がそれに続く。韻文編4章5’を含む。

A系はさらに a、b、c に分かれ、B系は c、d に分かれます。

a … 韻文編18章227~230 の3詩節半を含む。テキストのみ。マハーバーラタ12,242,4の引用を持たない。
b … 韻文編第18章227~230 の3詩節半が欠落している。テキストは1本を除いてアーナンダジュニャーナの注解を伴っている。マハーバーラタ12,242,4の引用を持たない。
c … 韻文編第18章227~230 の3詩節半が欠落している。ボーダニッディの注解を伴う。マハーバーラタ12,242,4の引用を17章23詩節と24詩節の間に持つ。
d … 韻文編第18章227~230 の3詩節半を含む。テキストのみ。マハーバーラタ12,242,4の引用を17章23詩節と24詩節の間に持つ。
e … 韻文編第18章227~230 の3詩節半を含む。ラーマティールタの注解を伴う。マハーバーラタ12,242,4の引用を17章23詩節と24詩節の間に持つ。

注解者の年代は、アーナンダジュニャーナは13世紀半ば、ラーマティールタは17世紀。
アーナンダジュニャーナの採用したテキストとボーダニッディの採用したテキストには大きな差異はなく、インドで繰り返し印刷されてきたのはB系のテキストだということでした。