2010年4月24日土曜日

a のゼロ乗が1なのは… 3

さてオリジナルのデカルトまで戻ってみるとどんな光景が展開するでしょうか。まずは『精神指導の規則』(野田又夫訳)の「規則6」から見ていきましょう。

「例えば6という数が3の二倍であることを想い浮かべたとすれば、私は次に6の二倍すなわち12を求めるであろう。そしてまだ興味があればさらにこれの二倍すなわち12を、さらにその二倍すなわち48を、そして以下同様に、求めるであろう。そしてここから容易に、同じ比が3と6との間にも、6と12との間にも存すること、同じく12と24との間等々に存すること、従って数 3,6,12,24,48 等は連比をなすことを、演繹するであろう。実にこのことからして私は、たとえこれらすべてがきわめて明瞭でほとんど子供じみて見えるにもせよ、注意深い反省によって次のことを理解するのである、すなわち、事物の比例すなわち関係(proportio sive habitudo)について提起されうるあらゆる問題が、いかなる構造を内に蔵しているか,またいかなる順序に従ってこれらの問題は探求されるべきであるか、を。そしてこれだけのことの中に、純粋数学の核心全体が含まれているのである」

デカルトが純粋数学の核心全体が含まれているものとして注目したのが連比をなす数列で、等比数列です。ここに現れている数列は二倍々々になっていますから 3(2)で表すことができます。そしてこの比を関係とも呼んでいることに注目して下さい。次に2aのようなデカルト的表記法について述べているところを「規則16」で見てみましょう。

「それゆえ、困難の解決に当たって、一まとまりのことと見なすべき事柄はすべて、ただ一つの記号によって表示することにする。この記号は任意に作ってよい。けれども、分かり易いように、文字a,b,c 等を既知量を表すに用い、A,B,C 等を未知量を表すに用いよう。そしてしばしばそれらの量の数(multitudines)を示すために、1,2,3 等の数字を文字の前につけ、またそれらの量が含むと考うべき関係の数(numerus relationum)を示すためには、数字を文字の後へつけよう。そこで、例えば2aと書けば、これは、a なる文字によって示されかつ三つの関係を含むところの量の、二倍、というに同じである」

ここでも関係の数が出てきました。指数を関係の数ととらえるのは何を意味しているのでしょうか?

関係の数とは、連続的な順序において相継ぐ比と解すべきである。これらの比を、人々は、通常の代数においては、多くの次元と図形とによって表わそうと努め、その第一を根(radix)と呼び、第二を平方(quadratum)、第三を立方(cubus)、第四を二重平方[平方の二乗](biquadratum)などと呼ぶ。実をいうと私自身も、かかる名称に長い間欺かれていた。なぜなら、線と正方形とについでは、立方体やその他これらに似せて考え出された図形ほど明晰に、私の想像に示されうるものはない、と思われたし、また実際これらを用いて少なからざる困難を解決もしたからである。」

ここで第一、第二、第三…といわれているのが関係の数を示しているのですが、ここではそれが従来、根・平方・立方・二重平方などと幾何学的表象を伴った名で呼ばれていることに注意しましょう。アリストテレスの権威のもとでは同じ数学であっても、幾何学と代数は全く別の対象を扱うものと受け取られていましたが、根・平方・立方などと言って幾何学的な学問領域に属するように見えても、それは代数で扱われる抽象的な、連続的な順序において相継ぐ比の数として理解することができ両者を普遍数学(Mathesis universalis)に包括できるとデカルトは気づいたのです。そしてこれからは、根・平方・立方などという言葉にに欺かれぬよう、これらの言葉を捨て去ろうと呼びかけます。

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